くろくろ便り 世界遺産の島 屋久島


日本初の世界自然遺産に


1993年12月、ユネスコは白神山地とともに屋久島を日本第1号の世界遺産に登録しました。屋久島は、一躍世界からの注目を集めることになります。
縄文杉や大王杉に代表される屋久杉は、標高600m以上に生育し、古来より神の宿る木とされてきました。
江戸時代に入ると、薩摩藩を代表する儒学者で屋久島出身の泊如竹は、飢餓により困窮する島民の姿を目の当たりにし、森林活用のすすめを説きました。
1635(寛永12)年より本格的な伐採利用が始まり、当時の切り株はコケに覆われ、まわりの低草木とともに幻想的な光景を創り出しています。
屋久杉の中で最大の縄文杉は、1966(昭和41)年に発見されました。ここに行くには、最寄りの車道からトロッコ列車の線路道を約3時間、さらに傾斜の続く登山道を約2時間歩く必要があります。推定樹齢7200年とされた悠久の大木は、見る者を圧倒します。
屋久島

自然が創り出した魅力の数々

屋久島は、九州で最高峰の宮之浦岳(1936m)をはじめ、1500m級の山岳が連なっており、「洋上アルプス」と呼ばれることがあります。
今から約1400万年前に海底が隆起し続けた結果、急峻な山肌をもつ屋久島が形づくられました。
また、近代文学を代表する林芙美子の作品「浮雲」に「屋久島はひと月に三十五日雨が降る」というくだりがあります。年間降水量は集落が点在する海岸沿いで4000mm、山岳部ではその倍と推定されています。
これだけの豊富な降水と、地面の地質のほとんどが花崗岩という条件は、島内各所に渓谷や滝といった景観美、湧水や温泉といった生活の恵みをもらたしてくれます。
大川(おおこ)の滝は、屋久島でも最長規模の88mの落差を誇ります。滝壺の近くまで近寄れるので、迫力は満点。近くには湧水や温泉が点在していて、地下水が豊富に存在していることの証といえます。
急峻な地形のため岩石海岸が多い屋久島のなかで、花崗岩が風化してできた白い砂浜が映えるのが島の北西に位置する永田浜。毎年、アカウミガメやアオウミガメの貴重な産卵地としても知られています。
自然と人間が共生する姿を、屋久島本物の自然にふれることで考えてみるのもいいかもしれません

※ 著:深見聡(長崎大学県境科学部准教授)
※くろぶたねっと『鹿児島へいらっしゃ~い』第31回より抜粋