くろくろ便り 田の神さあを探して


田の神さあ(タノカンサア)の世界


実りの秋、食欲の秋、新米の秋…
秋は大好きな季節です。ドライブしながら景色を楽しむのにも最高の季節です。
たわわに実った柿、少しずつ色づく木々、コスモスや真っ白な蕎麦の花畑。
特に田舎道をドライブするのがいいですね。
何と言っても黄金色に輝く稲穂は美しいです。
日本人の心にしみる風景。四季のある日本に生まれて本当に幸せです。

鹿児島には田んぼの神様「田の神さあ(タノカンサア)」がいます。
畦道や田んぼを見渡せる場所など、いろいろなところにいます。
あまり特別なものだとは思っていなかったのですが、旧薩摩藩地区にしかないということを知ってから、興味を持つようになりました。
鹿児島県内全域と、宮崎の一部におよそ2千体あるんだそうです。田んぼにお地蔵様のように置かれたものや、家庭内で保管されているものなどいろいろです。

江戸時代中頃から、人々は豊作への祈りと感謝の気持ちを込めて田の神像を作り、祀(まつ)るようになりました。
この田の神さあを囲んで「田の神講」という宴も盛んに行われていたようです。
形も様々で、仏様の姿や僧侶の姿をしたもの、旅人の姿、神社の御神体の神像をモデルにしたもの、衣冠束帯姿のものなどがあります。
座っているものや立っているもの。田の神さあが持つ物も多彩です。
鍬や鎌など農作業具、笏を手にしたもの、しゃもじ(メシゲ・メッゲ)とお椀を持っているものも…しゃもじも上向きや逆さに持っていたりと三者三様です。
大きな笠をかぶっているものやワラヅト(藁苞)もあります。ワラヅトというのは、藁で作ったポシェットのようなものです。

図書館の郷土コーナーには田の神さあにまつわる資料がたくさんあり、写真で見ることができるのですが、 本当にいろいろで、像マニアでなくても興奮してしまいます。五穀豊穣だけでなく、様々な信仰の対象としても祀られているようです。

実りの秋。豊作を祝い、田の神さあに感謝の気持ちを表すためにも、田の神さあめぐりのドライブなんていかがですか?その愛らしい表情に、思わず微笑んでしまうかも。

※ 著:西ひろみ(鹿児島ホンモノの食研究家 / タレント)
※くろぶたねっと『もぎたて鹿児島丸かじり』第12回より抜粋


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