掲載日2009/07/08 ライター:深見聡(ふかみさとし)
1975年、鹿児島市生まれ。2001年、NPO法人かごしま探検の会を設立し、2008年9月まで代表理事を務める。
2008年10月より、長崎大学環境科学部准教授。かごしま環境未来館などの市民講座の講師、長崎県美しいまちづくり審議会委員などを務める。鹿児島シティFMで毎週木曜18時過ぎからの番組内コーナー「鹿児島時空探訪」レギュラーゲスト。NPO法人かごしまライブカメラネットワーク副理事長。学術博士(観光学・人文地理学)。
7月22日午前、国内では46年ぶりに皆既日食が観測される。種子島・屋久島からトカラ(吐噶喇)列島(鹿児島郡十島村)、奄美大島北部で観測できることから、これらの島々へは多くの来訪者が見込まれている。
実は今回、これらの島の名前がクローズアップされているが、鹿児島郡三島村を構成する有人3島はあまり取り上げられていない。竹島・硫黄島・黒島でも、皆既日食ではないが、この天体ショーの観測が可能である。
三島村は、1955年、岩波写真文庫シリーズの1つとして『忘れられた島』との題名で刊行されて以来、有吉佐和子作『私は忘れない』(1959年の朝日新聞連載小説、翌年松竹が映画製作)、中村勘九郎(現・18代目勘三郎)による奉納歌舞伎(1996年)などで知られる。一方で、私の大学での講義経験では、『硫黄島からの手紙』の舞台となった東京都の硫黄島と混同して認識されているケースがかなり多い。
そこで今回は、薩摩硫黄島の自然や文化に焦点をあて、小島嶼のもつ魅力をご紹介していきたい。
▼白煙をあげる硫黄岳と硫黄島港の変色した海水
約7千年前、アカホヤとよばれる火山灰を関東地方まで飛来し堆積した噴火は、薩摩硫黄島の南東海域の一帯にある鬼界カルデラからもたらされた。その名残は、島の南西部に切り立った断崖の岬(永良部崎または恋人岬という)と、今でも休むことなく白煙をあげる硫黄岳(標高703m)がある。また、硫黄島港の海は、赤褐色に染まっている。
港の底から温泉が湧出し、そのなかの鉄分が溶けているためである。港のある砂浜・長浜浦をスコップで掘ると、自分だけの“浴槽”で温泉を楽しめる。
また、集落の外れには2か所の温泉がある。東温泉は、眼前に太平洋、背後に硫黄岳が迫る絶景の天然露天風呂。みょうばん泉質であり、肌がすべすべする。ただし、目にお湯が入るとしみるため、顔を洗わないほうが無難である。源泉が70度超あるため、いったん小さな湯船で冷ましたものが大きな2つの湯船に流れ込むように工夫されている。
坂本温泉は、硫黄島港から車で約15分、北側の海岸沿いにある。泉質は単純泉(食塩泉)で、東温泉は強酸性だがこちらは肌にやさしい感触をうける。源泉は50度超のため、干潮時の入浴は難しく、干潮と満潮の中間時に海水が程良く混ざり合い入浴に最適である。
▼好天時は屋久島の稜線も望める東温泉
薩摩硫黄島には、5軒の民宿がある。繁忙期は5月で、1998年から始まった「俊寛祭り」では毎年50名ほどの参加者が島を訪れる。それ以外にも、釣り客などが宿泊することを考えると、民宿の受け入れ許容人数に適った人数なのである。祭りの際、大名竹(本称:リュウキュウチク)のたけのこを、集落の外へ続く道沿いをはじめ至る所で採ることができる。また、集落の石垣に顔を出すつわぶきなどの山菜採りも人気を集めている。大名竹は、その名のとおり、かつて口にできるのは大名だけというエピソードがある。薩摩藩には、「1に大名、2に胡参(コサン)、3に淡竹(ハチク)、4に孟宗(モウソウ)」という言葉があったように、水煮やそのまま焼いて食べてもおいしい。加えて、自給自足的に漁業もおこなわれており、アジやキビナゴといった、山の幸・海の幸を民宿で楽しめる。
次回も、引き続き薩摩硫黄島の歴史や自然のみどころなどを取り上げる予定です。
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