鹿児島へいらっしゃ~い!鹿児島の地理・歴史をたずねる鹿児島フリーク「NPO法人まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会」が語る、こだわりの鹿児島コラムをお楽しみください。おもしろいところがたくさんありますよ。

連載第12回 温泉めぐり(2) ―和気湯と犬飼の滝―

掲載日2009/05/07 ライター:深見聡(ふかみさとし)

1975年、鹿児島市生まれ。2001年、NPO法人かごしま探検の会を設立し、2008年9月まで代表理事を務める。

2008年10月より、長崎大学環境科学部准教授。かごしま環境未来館などの市民講座の講師、長崎県美しいまちづくり審議会委員などを務める。鹿児島シティFMで毎週木曜18時過ぎからの番組内コーナー「鹿児島時空探訪」レギュラーゲスト。NPO法人かごしまライブカメラネットワーク副理事長。学術博士(観光学・人文地理学)。

鹿児島には、県内いたるところに温泉がある。鹿児島市内の銭湯は、一部を除きほとんどが天然の温泉である。また、指宿や霧島など、全国に名の知れた温泉観光地も多い。

今回は、来年放送の大河ドラマ『龍馬伝』で主役として登場する坂本龍馬ゆかりの温泉と名瀑をご紹介しよう。

▼自噴泉のため湯の量や色も季節で変化する和気湯

自噴泉のため湯の量や色も季節で変化する和気湯

龍馬も入ったと伝わる和気湯

湯の名の由来は、奈良時代中期から平安時代初期にかけて活躍した高級官僚・和気清麻呂が入湯したことに伝わる。

彼が頭角をあらわしてきた当時、奈良の大仏を造立させたことで知られる聖武天皇の娘・孝謙天皇の治世であった。のちに称徳天皇として重祚(同じ人物が新たな天皇として再び即位すること)するなど15年近く権力の頂点にいた。その補佐役として女帝から全幅の信頼を得たのが弓削道鏡(ゆげのどうきょう)である。769(神護景雲)3年、太宰府の主神が、次代の天皇には道鏡がふさわしいという、豊後・宇佐八幡宮の「ご神託」を奉じた。清麻呂は、その真偽を確かめるために宇佐八幡宮に赴き、「ご神託」が偽物であることを天皇と道鏡に報告した。ところが、両名の怒りをかってしまい、清麻呂は大隅国へ配流となった。これが、いわゆる「宇佐八幡宮神託事件」のあらすじである。

実は、第11代藩主島津斉彬が八田知紀(のちに宮廷歌人となる)に命じて、清麻呂が大隅国のどこに配流されたのかを調査させた。この結果、この牧園の地に滞在したと確定した。そのため、斉彬が藩主就任前に編纂されていた『三国名勝図会』には、和気湯や彼を祭神とする和気神社は載っていない(実際の鎮座は1946年)。そのことから、ここが和気湯と明らかに呼ばれるようになったのも、意外に古いものではないといえる。しかし、湯舟の落ち着いた雰囲気と、その横には清麻呂が座ったといわれる腰掛石が古の面影を感じさせる。

斉彬の現地検分から十数年後の1866(慶応2)年、坂本龍馬と妻のお龍が和気湯に入ったといわれる。自噴式で湯底から湧き出る炭酸水素塩水は、戦後荒廃したこともあったが、所有者の努力で、いまは開放感あふれる露天風呂として知る人ぞ知る温泉としてよみがえった。

入浴料は寸志、入浴時間は日の出から日の入りまで。

▼「新鹿児島百景」第1位の犬飼の滝

「新鹿児島百景」第1位の犬飼の滝

龍馬ゆかりの名瀑

和気湯からさらに歩をすすめること約15分、落差36mの犬飼の滝が見えてくる。今から約2.5万年前、姶良カルデラ(現在の錦江湾奥部)から入戸火砕流堆積物(シラス)が噴出し、圧縮されたところは溶結凝灰岩となり急崖を形成した。犬飼の滝は、その岩盤を浸食してうまれ、幽谷のなかに壮大な水勢をみせてくれている。

1866(慶応2)年、坂本龍馬は寺田屋での襲撃を逃れて、小松帯刀や西郷隆盛の招きで妻のお龍とともに薩摩の地を踏む。犬飼の滝をみて、「この世の外かと思われ候ほどのめずらしき所」と姉への文に記している。夫妻はここからさらに高千穂峰の山頂まで足を延ばした。10日ほどを霧島近辺で過ごし、温泉入湯や魚釣りのほか、短筒(ピストル)で鳥を獲ったりするなど、霧島の自然を堪能した。

子ども時代を鹿児島市立名山小学校で過ごした与謝野鉄幹は、「罪なくて 遠流に遇える 清麻呂も 霧島にいて 聴きし滝音」の歌を残し、先人の足跡に思いをはせている。

2000年、南日本新聞が「21世紀に残したいふるさと・鹿児島の景観」をテーマにした「新鹿児島百景」の第1位に選定された。

【MAP】和気湯と犬飼の滝
(Yahoo地図にて場所がご確認いただけます)
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